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不易流行〜変わらないあなたと、変わるあなたへ
〜2011年、『電子書籍』は『紙の本』のライバルとなるのでしょうか〜





西澤保佑

西沢書店
創業100年記念出版

「あの キーは 
どこへ いった?」


●西澤保佑/著
(元・西沢スキー・オーナー
現・西沢書店代表取締役社長)
●河出書房新社刊 
●1,575円(税込)
 
好評発売中!

古代中国の荘氏の「無用の用」という言葉があります。一見役に立たないと思われるものが、実は大きな役割を果しているという意味です。
江戸時代には「不易流行」という言葉が生まれました。俳人松尾芭蕉が『奥の細道』の旅のなかで体得した概念といわれています。
不易とは変わらないこと、変えてはいけないもの。流行とは変わるもの、時代の中で変わっていくものを意味します。
「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」。つまり両方とも基本は一つにあるということです。

昨年から流行になっている「電子書籍」と「紙の本」の関係にも、そのまま当てはめることができます。昨今は「不易」より「流行」が重視される風潮が顕著なのかもしれません。企業や社会から「即戦力の人材」や「すぐに役立つ知識」が求められています。しかし、これらは見直される傾向にあります。早さ、便利さを優先するあまり、その場しのぎに終わってしまいがちだからです。不易の基礎がしっかりとしていないために、ちょっとした変化に対応できないのです。すぐに役立つ知識も同様です。微妙なヴァリエーションに耐え切れず、明日には陳腐なものになり果てる。その結果、両者とも使い捨てになってしまうのです。舞台の書き割り、ハリボテと同じ。舞台が終われば不要。しかし、使い捨ての文化はあっても、文化は使い捨てることができません。人の心も同じです。

「電子書籍」か「紙の本」かという二者択一はあまり意味がありません。それぞれ、よいところがあり、不都合な部分も兼ね備えているからです。ただ一ついえるのは、我々の眼は一点を見つめ、そこからまた一点に向かうという以外に、全体の風景をいっぺんに捉え、感じ、そこに光り輝く新たな一点の光を見出すことができるということです。何気なく本屋を覗き、その風景全体の中から手にした一冊が永遠の宝物になるというのは、稀有なことではありません。紙の本の本当のよさも、電子書籍が生まれたことでより一層際立ちます。同時に電子書籍の可能性をより求める機運も高まるのではないでしょうか。イエスかノーか、黒か白かの二者択一ではなく、第三の視点を豊かにするところに文化は生まれます。二者択一を迫るのは言葉を代えた脅迫になりかねません。「不易流行」の意味を深く噛みしめたいものです。

さて、時代小説の人気は相変わらずのようです。
NHK大河ドラマですでにおなじみですが、戦国の世の苦しみを知りぬいた「江(こう)」が注目を浴びています。同時に、幕末維新、そして『坂の上の雲』に代表される明治も変わらぬ人気です。幕末維新、明治は視点を変えれば世界的な戦国時代の始まりといえるのかもしれません。列強の属国にならずにどのようにして日本を、あるいは日本人としての誇りを保ち、独立させることができるのか。その端緒を切り開いたのが明治なのかもしれません。
戦国、幕末維新、明治、そして昭和、平成。日本人はどのように変わらなければならないのか、また、どこを変えてはいけないのか。「不易流行」……私たちは時代小説に無意識のうちにそれを求めているのかもしれません。
以上、店主の戯言。お許しいただければ幸いです。

今年もよい年でありますように……。
みなさまと共にある「本屋」を今後も不易に目指してまいります。
変わらないあなたと、変わるあなたへ――
あなたの未来を大きく指し示してくれるかもしれない本をたくさんご用意して、ご来店をお待ち申し上げております。

店主敬白