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みなさまのご愛顧に感謝して……。 西沢書店、創業100周年   西沢書店社長 西澤保佑




西澤保佑



第十二代 西澤喜太郎
(大正12年撮影)



第十三代 西澤喜太郎

安政年間、信濃国長野村に小さな店舗を構えた「小枡屋松葉軒西澤」。明治42年(1909)、福島市大町に書店をオープンしたのと時を同じくして社名を「西澤書店」とし、今年でめでたく、100周年を迎えることができました。
これも一重に福島のみなさまの、あたたかいご支援、ご愛顧の賜物と深く感謝いたしております。

長野の書店がなぜ100年前に、この地にお世話になったのか。それには不思議な縁がありました。
長野県を全国有数の教育県に育てた功労者として渡辺敏(わたなべ はやし)先生、浅岡一(あさおか はじめ)先生という兄弟の教育者がいます。いずれも福島県二本松出身の幕末生まれで、明治維新の日本近代教育の礎を築いた功労者、教育界の恩人として、長野県の教育史にその名をとどめている人物です。第12代当主西澤喜太郎はこの2人の兄弟と深い親交があったようです。そしておそらく、渡辺先生から進取の気風と勉励刻苦をいとわない文化の香り高い福島の地に書店を開き、教育振興の一助になるよう強く勧められたのではないかと推察されます。浅岡先生は信濃教育会の初代会長に推挙され、教育界の中心人物として大きな影響力を発揮しました。明治39年、その職を辞してから福島県立会津中学校校長に招請され、6年間会津教育振興にあたりました。意気に感じ、福島の地に夢を馳せた喜太郎の目は輝いていたことでしょう。

教科書をはじめ、書籍・雑誌・理化学機器・楽器・文房具の販売店として営業を開始。そして、地域に密着した事業を目指し、地元のみなさまから親しみを込めて「にしざわほんや」と呼ばれるよう日々努力を重ねてまいりました。おりしも総合出版社大手の講談社、検定教科書出版社の東京書籍も本年が100周年です。太宰治、松本清張も生誕100年。横浜の有隣堂書店など、同業の書店の中にも100周年を迎えるところがございます。100年前といえば、おそらく人びとが書籍・雑誌に代表される文化的なものに、目を向けはじめた時期と重なっていたのでしょう。ここに明治41年10月発行の雑誌『実業之日本』があります。目次を開くと錚々たる論客が日本の未来について熱い提言を行っています。早稲田大学の創立者大隈重信、日本の近代経営の祖といわれる渋沢栄一、そして5000円札の肖像にもなった農学者新渡戸稲造など。当時の文化的熱気がいきいきといまに伝わってきます。

書店という事業を通して、地域文化に貢献し人びとの豊かな暮しに役立つ情報を伝えたい――これが西沢書店創業以来の変わらぬ願いです。弊社は本年を100周年イヤーと位置付け、例年に増して地域のみなさまに役立ち、楽しんでいただける企画を多数準備しております。
今後ともご指導・ご鞭撻、そして変わらぬご支援とご愛顧を賜りますよう、お願い申しあげます。
 
       店主敬白

★アジサイ (2009年初夏 二本松市)

撮影:福島県図書教材 清野史彦様

★2008年春の福島市花見山